2023年は生活者参加の時代。(ネイティブ・マーケティング)

新年 あけましておめでとうございます
マーケティング ジャンクション 吉澤です。

2023年を迎えるにあたり、私たちはどのような時代の潮流の中にいて、どのようにマーケティングを展開していくべきか展望してみました。ご笑読いただければ幸いです。つまらなかった際はお目汚しをお許しください。

【1 大きな流れ・生活者の参加】

弊社はインターネットの普及とともに歩き、創業25年目を迎えています。この間、一貫していた流れは、マーケティング活動への生活者の関与の深まりです。はじめに、ネットリサーチが多くの企業と生活者の距離を縮めました。その後、ECが購入者の評価を再発信することで、新しいセールス環境を作りました。

多くの人たちが、商品やサービスについてSNSで出会うことが当たり前になり、やがてYoutuberが代表ユーザーとしてリーダーシップを持つようになりました。この流れは今後も続くと思っています。

【2 中心の流れ・自然な共創】

大きな流れの最大の特徴は、無償でマーケティング活動を共創してくれる人々の存在です。ボランタリー経済などと呼ばれることもありますが、それはいささか提供者視点が強いように感じています。私はこのような生活者の活動は、もっと人間の根源的で本能のような欲求によるものだと思っています。

それは例えば”自分が体験した幸福を人にも分かちたい”といったものです。このような気持ちを持った人には、夢や憧れがあり仲間たちからの期待や信頼を集めます。”共に作り出してくれる人々”がマーケティングの重要な部分を担っています。

【3 新しい流れ・提供者の中の生活者】

ここ数年、スパイラルが一巡してきたような販売スタイルが好評を得ています。それは、”ファンや先行ユーザーとしての販売スタッフ”の活躍です。例えば、そのブランドのコンセプトやテイストが好きで、店頭スタッフになったような人たちの好事例を多く目の当たりにしました。

かつて、カリスマ店員(もっと昔ではハウスマヌカン?)と呼ばれた人たちが、スパイラルを一巡してステップアップし活躍しています。オムニチャネル化がこの人たちの活動を高め、ECブログでのコーディネイト提案やLINEでのおしゃべりが、「等身大の自分を重ねながら、会いに行けば話せるファン代表」として愛されています。

【4 流れに乗れない人々・対立】

このような潮流にうまく乗れない人たちにも多く出会います。その原因はほぼ共通していて「私は売る人(店員) あなたは買う人(お客様)」というポジション意識にあります。例えば試着後に「大変お似合いですよ」と声をかける昔ながらのへりくだり接客です。丁寧なようですが、うまく伝えられないと「私は見立てができる人、あなたは見立てができない人」という印象を残します。

何より、褒めてばかりで自分の意見を言えない人は、売りたいだけの人だと見抜かれます。一方で、受け入れてもらいやすい人は、同じ一人のユーザーやファンとして、正直に個人の意見を伝える人です。例えてみれば、顧客と並んで同じ方向を向き、同じ夢や憧れについて共有できている人です。

【5 大きな潮流をどう捉えるか】

少し話が飛びますが、昨年から度々妄想していることがあります。それはマーケティング活動は、”提供者と消費者が商品を売り買いしている対立的な関係”から少し視線を離し、”人々が様々な情報や体験を交換することを喜びとして行動している”ことに視野を広げ、その中でどう貢献するかを考える時代になったという想いです。

つまり、興味への目覚め(お気に入りのミュージシャンを見つけるでも、徹底的に美しい掃除方法への興味でも……)から、その興味について共有できるネット空間での情報収集やコミュニケーション、レビューやレコメンドなどの代理体験、試用やダイジェストなどの体験、実際の体験、体験後の共有や未経験者への情報提供など、一連の情報交換体験が、関わる人達の喜び”や”満たし”であり、その中の一部に、商品と金銭の交換行為が含まれるという考え方です。

【6 ネイティブ・マーケティング】

この広い視野で見た、無償・有償の交換空間には、ひとつのルールがあります。それは「マジ」「本気」であることです。認証欲求や売名知名欲求も見え隠れしますが、基本的には本心でそう思った”他者に何らかの益をもたらす情報”のおすそ分け行為です。おそらく、狩猟時代に余った獲物を仲間に分け与えたような行為に近いものではないかと思っています。

その中に肉を切るナイフと火打ち石を交換するような行為も育ったのかもしれません。
このような、少し視点を広げてみた交換行為をネイティブ・マーケティングと呼んでみました。私が作った造語なので、このような交換行為をマーケティングと呼ぶのはいささかはばかるところがあります。ただ、結果的に経済的な交換を促している以上、マーケティング的機能を持っているのだと思います。

【7 WEBとネイティブ・マーケティング】

WEB3について多くの人が話題にしはじめました。WEB1.0、WEB2.0という4半世紀を振り返ると、WEBという道具を使い社会を豊かにしてきた本当の立役者は、生活者=ネット市民だったのだと確信しています。
印象派の作品に風景写生が多い理由として、チューブ式絵の具の市販化があると聞いたことがあります。それまで画家は絵の具の製造者でもあり、それは屋内で行われていたからです。チューブ式の絵の具は、絵の具づくりを絵描きから開放し画家の敷居を下げた結果、市井から多くの新しい才能を生み出したのです。

現代に例えればユーチューブ式絵の具です。その後、写真も新しい道具として生まれ、現代では感光剤や現像から使い手を開放しています。
ここまでのWEBも、間違いなく生活者の道具として新しい表現やコミュニケーションを生んできました。そして、その結果として交換行為を加速し、かつてないマーケティングを作り出してきたと思います。それを可能にしたのは、誰もが持って生まれたマーケティング的能力だったと思います。
WEB3も恐らく生活者からの新しい交換行為として、形作られていくように思います。

【8 提供者は何をすべきか?】

多くのメーカー、リテーラー、インフラストラクチャ…企業は、何らかの文化や学識や技術などのエキスパートだと思います。この専門性を、生活者と対面しながらではなく、同じ方向を向きながら共有することが、社会全体で喜びを増やすことになると思います。

この姿勢の隠れた力は、企業の社員・スタッフ・協力者の興味や、やりがいを高めることにもあり、人材という課題をも解決する力を持っています。企業そのものの、ネイティブ・マーケティング力を表に出していくことが、拝金主義に偏りがちな企業活動を、より良いものにしていくと思います。このためには、企業内のコンテンツを整理し、見直してていくことからはじめるとよいでしょう。この話は、別の機会にお話できたらと思います。

【50のキーワード】

ネイティブ・マーケティングを発想する際に手がかりとなりそうなコンセプトワードを50作成しました。よろしければご活用ください。

称賛 / 認証 / 共感 / 共鳴 / 同意 / ネガティブの分散
ポジティブのおすそ分け / 代理体験 / 予備体験
同じリスクの経験者 / 類似体験 / 共通体験 / 回顧
共同研究 / 共同作業 / 共創 / 協力 / 追随 / 追従
学習 / 教育 / ノウハウ / レシピ / 発見 / ニュース
認識 / 気づき / フォーカス / 連想 / 連鎖 / 連続
競り / 譲渡 / 販売 / 配布 / 代行 / 相談 / 探索
近所 / 同欲 / 道連れ / コーチ / 愛 / 多様性
同期 / 超時空 / 象徴交換 / まわり物 / 再会
再生 / 誓い
ここに書いたことは未来予測ではなく、ここまでの時代の潮流に乗りながら、目指したい未来です。主体的に未来を作り出すことは、楽しいはずなのです。

本年もよろしくお願いいたします。