よしざわりゅう

2025年から26年のマーケティングにおける課題を挙げます。

1. 日本発のポップカルチャーが牽引する新ジャポニズムの時代

消費者は心身の健康や幸福感を求める傾向が強まっています。特に「心の豊かさ」や「時間の余裕」を重視する層に向けた、健康関連商品やストレス軽減サービスの需要が増加。マーケティングにおいては、消費者のライフスタイル全体を理解し、「健康」や「日本の漫画、アニメ、ゲーム、ボーカロイド音楽、ネットミュージックアーティストなどのポップカルチャーが、世界的な成功を収めています。
たとえば、アニメ『鬼滅の刃』や『進撃の巨人』は海外で映画化されるほどの人気を博し、関連グッズやイベントがグローバル市場で拡大しています。また、音楽ではボーカロイド「初音ミク」が欧米やアジアでライブを行い、世界中のファンコミュニティを形成しています。さらに、YOASOBIやAdoといったネットミュージックアーティストが、デジタル配信を通じて国境を越えた人気を集めています。
これに加え、日本のゲームも「新ジャポニズム」の中核を担っています。『ゼルダの伝説』『ファイナルファンタジー』『ポケットモンスター』といったタイトルは、世界中で親しまれ、文化的アイコンとなっています。これらのコンテンツの成功をバネに、新しい才能への支援や、体験型イベントの応援を促すことが、マーケティングの重要な課題です。

2. 多様性社会での「自分らしさ」を支援するマーケティング

グローバル化やジェンダー平等、多様性尊重の進展により、「自分らしい生き方」を求める人々が増えています。
たとえば、パーソナライズ化された美容商品では、ファンデーションやスキンケア製品のカラーバリエーションが多様化し、すべての肌色に対応する商品が登場しています。ファッション業界では、ジェンダーニュートラルなデザインや、身体的特徴に配慮したインクルーシブなアイテムが注目されています。また、体験型サービスとしては、自己成長や趣味の追求を支援するオンライン講座やワークショップが人気です。
企業は、多様性を尊重した商品やサービスの開発に加え、「共感」を生むメッセージを発信し、消費者との深い結びつきを構築する必要があります。

3. AI時代における「人間らしさ」をマーケティングの中心に

AIやロボットの普及により、多くの業務や生活が効率化される一方で、人々は「人間らしさ」や「予測できない体験」に対する新たな期待を抱いています。合理的で効率的なサービスが当たり前となる中、偶然やハプニングが生む驚きや感動が、消費者にとって新しい価値を持つようになっています。観光業やエンターテインメントでは、計画された体験だけでなく、予定外の発見や人と人との触れ合いが旅や娯楽の満足度を大きく左右しています。

さらに、消費者が商品やサービスを通じて共感を得る体験が、ブランドに対する信頼と愛着を深める重要な要素となっています。たとえば、体験型イベントでは、消費者が製品やサービスの背景にあるストーリーを実際に感じ取れる場が提供され、単なる機能や効率を超えた感情的な価値を提供しています。こうしたアプローチは、購入の決め手として、消費者との長期的な関係性を築く要因となっています。

また、AIの合理性と、人間の温かみや感情を組み合わせることが、消費者との信頼構築には欠かせません。効率的なデジタル対応に人間らしい柔軟さや共感を加えることで、消費者がブランドに抱く感情的な結びつきはさらに強化されます。

AI時代における「人間らしさ」とは、偶然性や予測不可能性を含む体験、そして感情を通じた共感の価値を提供することです。企業はこれを念頭に置き、効率性だけに頼らず、体験価値を高めることで、消費者とのより深い絆を築く必要があります。

4. デジタル体験と購買行動の進化が生む持続可能な消費モデル

近年、生活者は現物を直接手に取らずに、写真や動画を通じて商品を選び、ECで購入することに慣れつつあります。これにより、リアルな店舗での購買行動に依存しない「デジタル購買体験」が急速に普及しています。例えば、アパレルでは写真や動画だけでなく、仮想試着アプリが普及し、消費者は自分の体型やスタイルに合った商品を選びやすくなっています。また、家具やインテリアでは、AR技術を活用して実際の部屋に配置したイメージを確認できるサービスが一般化しています。

これらのデジタル体験の進化は、結果として受注生産の促進と廃棄物削減につながっていきます。具体的には、消費者が購入を決定する前に商品を仮想的に試せることで、返品や在庫の過剰を防ぎ、大量生産に依存しない持続可能な生産モデルが可能になります。例えば、カスタムメイドのスニーカーや家具、オーダーメイドのアパレル商品など、購入後に生産を開始するビジネスモデルが注目を集めています。

マーケティングの課題として、こうしたデジタル購買行動をさらにリアルに、そして消費者にとって信頼できるものにする技術の向上が挙げられます。たとえば、高解像度の写真や動画、AR/VR技術による詳細なシミュレーションの提供が必要です。また、このような購買体験が環境意識や持続可能性に寄与することを消費者にアピールし、「サステナブルな選択」として価値付けすることが、ブランド戦略において重要なポイントとなります。

さらに、受注生産を中心としたビジネスモデルは、消費者の多様なニーズに応えるだけでなく、企業にとっても生産コストの最適化や在庫管理の効率化というメリットをもたらします。これらを活かしたマーケティング戦略が、これからの時代における競争力の鍵となるでしょう。

5. 「消費の質」を重視したエシカルマーケティングの推進

大量生産・大量廃棄型の消費モデルからの脱却が求められる中、消費者は「長く使えるもの」「環境に優しいもの」を選ぶ傾向を強めています。
たとえば、アパレル業界ではリサイクル可能な素材を使用した商品や、衣服のレンタルサービスが注目されています。家具業界では、修理可能な設計やリユースプログラムが普及し、製品のライフサイクルが延長されています。また、食品業界では「食品ロス削減」の取り組みが進み、需要に応じた小ロット生産が導入されています。
企業は、環境への配慮を具体的な形で示すことが求められます。製品の素材や製造工程を透明化し、消費者に対して「責任ある選択肢」を提供することが重要です。さらに、廃棄物削減やリユースプログラムの実施など、環境保護への直接的な貢献がブランド価値を高める要因となります。

結論:中心を貫くマーケティングの方向性

2025年のマーケティング課題は、複雑化する消費者の価値観と急速に変化する社会環境への適応が中心と2025年のマーケティング課題を通じて明らかになるのは、「共感」「持続可能性」「デジタルと人間らしさの融合」という3つの柱です。
生活者は商品やサービスを通じて、自分の価値観に響く体験やストーリーを求めています。また、環境保全や多様性の尊重といった社会的責任を果たすブランドが、より深い信頼と支持を獲得する時代が到来しています
企業は、文化的価値を活用しつつ、環境・社会問題に積極的に取り組み、デジタル技術を最大限に活用した「持続可能で人間らしい体験」を提供することで、新しい時代に適応するべきです。